虐待かなと思ったら… 189 虐待かなと思ったら… 189

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第一回緊急シンポジウム議事録

2010.07.15活動報告

平成15年5月30日
衆議院第二議員会館 第三会議室

坂本 和子氏(里親((養育家庭))・アン基金プロジェクト事務局長)
長井 晶子氏(全国乳児福祉協議会副会長・『久良岐乳児院』院長)
桑原 教修氏(全国児童養護施設協議会副会長・『舞鶴学園』園長)
遠藤 浩氏(全国自立援助ホーム連絡協議会代表・『遠藤ホーム』ホーム長)
プログラム

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緊急シンポジウム
~『児童虐待防止法改正に向けて市民は訴えます!』~

日時 : 5月30日(金) 11時~13時 (開場10時半)
会場 : 衆議院第二議員会館 第三会議室 


<平湯> 
このシンポジウムを主催している、全国ネットワークの関係の仕事をしている、平湯です。今日は、JASPICALをはじめ、いくつもの団体が共催でやっております。12月の集会パレードもそのような形でしましたが、こういう国会内での活動を一緒にするというのは初めてのことです。ちょうど衆議院でも青少年特別委員会で議論が始まりました。この委員会で非常にご熱心に取り組んでおられる衆議院の保坂先生、福島先生に、少々お話をいただけますと大変ありがたいと思います。

<保坂> 
社民党衆議院議員の保坂展人です。皆さん今日はご苦労様です。虐待防止法は2000年に5月に成立しました。解散直前に成立され、不備があるということは承知の上で、3年後に見直しましょうと、その間しっかり、十分できなかった議論を重ねていきましょうということでした。その3年目が来ているときに、ご関係の皆さんや、特に子どもたちがいっそう厳しい状況がある中で世論が大いに盛り上がってきました。また、福島先生もいらっしゃっていますが、これは与野党問わず超党派で、充実させるべきだという方針でいます。  
 これから虐待の予防防止、速やかな救出、そしてその後のケアを一本の道筋として描くような法改正に向けて、衆議院の段階で青少年の特別委員会、今非常に活発に動き出しています。超党派の議員連盟、チャイルドライン、参議院の共生調査会の皆さんとの議論の積み上げと交換も昨日行いました。一生懸命いい法律に改正していきたいと思います。ぜひ皆さんのお力添えをお願いしたいと思います。

<平湯> 
ありがとうございます。では、福島先生お願いします。

<福島> 
おはようございます。公明党の厚生労働党会長の福島です。私ども公明党も、この児童虐待防止法の議員立法のときに精力的にかかわらせていただきました。そして、見直しにあたりまして、この1ヶ月間、活発に動いています。審議会に平湯先生にもお越しいただきました。様々な方からご意見を頂きまして、より良い法律に仕上げていきたいと思っています。そしてまたもう一つ大切なことは、虐待の予防、家族へのケアといった、幅広い体制の強化ということを図っていなければならないと思っております。この3年間、子育て支援ということで、様々な施策にかかわらせていただきました。21世紀に向かって児童虐待が起こらないような体制作りをするために、さらに充実する必要がある思っております。エンゼルプランというものがありますが、そういった一般的な施策にのって、養護施設の問題、児童相談所の問題、これから予算措置も含めたが体制強化が必要ですから、私個人的には新しい児童福祉プランというものをきちっと作り、その中で体制作りというものを、きちっとお金をかけてやっていくことが必要だと思います。虐待防止法の見直し、同時にそうした体制の強化に全力を挙げていきたいと思います。どうかよろしくお願いします。

虐待防止法改正をめぐる最近の動き
<平湯> 
それでは虐待防止法改正をめぐる最近の動きについてご説明します。今お話に出ましたような、国会内の動きですが、参議院の共生調査会が、いろいろ動いておられて、提言をまとめています。それから、衆議院の青少年特別委員会は5月に、参考人意見陳述という機会がありました。それから、厚労省の専門委員会が去年の12月から発足して、これをまとめるという段階に来ていて、来週に入ると、厚労省の専門委員会のまとめが出されます。それから青少年特別委員会、こちらの方は施設の査察を予定しておられるようです。
 この全国ネットの動きとしてはシンポジウム、それから提言のパンフ、去年の12月にはパレード集会を企画しました。それから虐待防止研究会は、12月に東京大会、それから今年の2月には提言を発表しております。それから、自立援助ホームの国会請願署名、それから全養協の国会要請要望というのも去年から今年にかけてございました。
 地域的な関係で言いますと、あちこちで動きが出てきておりますが、最近では、大阪子どもネットという幅広い集まりが発足したということであります。今日以降のことについて言いますと、日弁連が政府見直し意見書の検討をしています。6月に入りますと全国児童相談所所長会が開かれて、そこでも要望提言が出ると聞いています。このようないろんな流れというものは、共通したところで申しますと、虐待防止法が発生予防から、子どものケア、親の援助にいたる長いスパンをもった課題であることを、はっきり施策法律にしてもらいたいということだと思います。これは先ほど福島議員も言われたことですが、そうしたことから、今日の発言の予定を見ますと、プログラムに4人書いてありますが、養護施設、乳児院、里親、それから自立援助ホームということで4人お名前出ております。これは、今日の発言、いずれも保護した後の子どものケアというふうなニュアンスになりますが、ここだけに施策が、あるいは法律の見直しが限られるものではないということは言うまでもないと思います。プログラムに載せておりますが、後で、ご参加の皆様からも、発生予防やそれ以外のこともお話いただきたいと思います。それから、第2回のシンポジウム開催も決まっています。参議院の福島瑞穂議員がお見えですので、ご発言を頂こうと思います。

<福島瑞穂議員>
 
どうも皆さんこんにちは、社民党幹事長の福島瑞穂です。STOP児童虐待、ということで、虐待を受ける子どもたちを本当に一人でも減らそうと頑張っておられる皆さんと一緒に頑張りたいと思います。ちょっと遅れたのは、参議院の共生社会に対する調査会の議事懇談会をやっておりました。参議院の共生社会に関する調査会は、いわゆるドメスティックバイオレンス防止法を作り、今共生社会のもとにおかれたプロジェクトチームで、具体的に改正案の作業に入っています。今ずっとやっていますが、臨時国会には改正案を出したいと思っています。
 また、青少年特別委員会、共生社会は主にDVと児童虐待、障害者、特にDVと児童虐待で視察に行ったり、頑張ってやってきました。国会の委員会の話ですみませんが、児童虐待が、衆議院の青少年特別委員会でやるので私たちは入れないのかなあと思っていましたら、児童虐待のための大きな超党派の議連の中でやるということになったようであります。そうしますと、共生調査会の、今日の議事懇談会で決まったのは、共生社会の参議院の理事や議員の人たちも積極的に、この児童虐待の超党派の議員連盟に入って、いっしょにやっていきましょう、と。でしゃばるという意味ではなく、家族の中の子どもの問題、女性の問題もありますし、いろんなことをいっしょにやれると思いますので、一緒にやっていけるというふうに、心強く思っております。もちろん最終的には青少年特別委員会の人たちも、最終的には委員会がそこで、議員立法が議論される可能性がきわめて高いわけですから、一緒にやっていきたいと思っております。
 ですから、国会のレベルでは、児童虐待の改正案を作る、超党派の大きな議員連盟が頑張って、いい改正案を、まあ運用面をどうするという問題もありますが、いい改正案を出して行くことが大事だと思っています。法律で行政が動くところが大変にありますから、児童虐待防止法はぱぱっとできてしまった経緯もありますから、皆さんたちもここはこうしてほしいああしてほしい、ここが足りない、ここはこういう制度にしてほしい、ものすごくもっていらっしゃると思います。ぜひ、できるだけ大きな超党派の議連の活動の下支えとして私も頑張っていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 今日は共生調査会に関する調査会で、児童虐待の防止に関する決議というものを決定しました。報告書は今4日までに意見があったら言ってくれて、来月上旬にでも、提言も含めて分厚い中間報告が出ると思いますし、それも決議もいれて、これはもちろん通してですが出したいと思っています。こうしたことが本当に、児童虐待防止法改正に向けて、いい追い風になるということをぜひ祈っております。頑張りましょう。ありがとうございます。

<平湯> 
ありがとうございました。今福島先生の方から、超党派の議員連盟というものが出ました。つい最近そういう動きが出たというのは非常に心強いことです。この議員連盟というのは、虐待防止法見直しの超党派議員連盟というものではないのですが、ご存知の方も多いと思いますが、「チャイルドライン議員連盟」が前から活動しておられて、要するに子どもの命のSOS電話なんかを中心に、そういうことに関心をもった大勢の超党派の議員連盟がありまして、会長が自民党の川村先生、それから事務局長を保坂先生が務めています。本当に広い範囲の議員連盟のようですけれども、そこがこの虐待防止法改正に向けて取り組むということになったというのが今の福島先生の報告でした。
 私たち市民から見ますと、国会には衆議院と参議院があるわけですが、例えば参議院でいいますと、共生調査会という、一種の特別委員会のようなものが、福島先生を中心にずっとやってこられた。それから衆議院では、男性の福島先生や保坂先生らがメンバーで3年前にもやられて、今また始まっているわけです。参議院と衆議院とが別れてしまいますと、どちらがどういうふうに動いておられるのかが私たちから見るとわかりにくいところがありまして、むしろ超党派でかつ衆参共通の議員の皆さんの動きがあると本当にいいな、と思っていたわけです。それが、今申し上げたような形で実現しかけている、というのは非常にいいことだと思います。
 それでは、4人の方のご発言を頂こうと思います。保護された子どもがまず入る乳児院の方からお願いします。

Ⅰ  現場からの報告

<長井>
長井です。全国乳児福祉協議会副会長と『久良岐乳児院』院長を務めております。パレードやなんかには乳児院はこれまで協力させて頂いてきましたが、このような会では初デビューではないかと思います。もう一つパンフレットのほうに、全乳の副会長という肩書きがございますが、それに私がなりましたのは、今年の五月の1日でございます。そんなわけで、まだ新生児、ということでありますので、今回の発言は、久良岐乳倉木乳児院の長井晶子の私見としてお話させていただければと思います。
 乳児院というのは生後5日目から、新生児から、幼児までをお預かりしている施設です。入所時の背景は、障害児、虐待、しかる理由の虐待での入所率にすれば、全国で約8%、それに、棄児であるとか養育拒否であるとか、ネグレクトを入れてもカウントとしては25%。これは全国レベルの問題です。私共の施設は横浜にありますが、横浜では、もうほとんど入所児の80%ぐらいが虐待です。その他に、それによって受けました障害をもち、病虚弱児である子どもたちを受けています。その反面、実に短期の、7日間や10日間ですとか、親御さんのお父様が入院してどうしても付添しなければなんていわれると、その間お子さんを預かるという利用的なこともやっているという、大変に落差の大きいところでございます。
 家族の背景は、未婚のお母さん、若年のお母さん、受刑のお母さん、外国人でつかまってしまったお母さんの子ども、それからDVのお母さん、ホームレスの方、育児ノイローゼの方、精神疾患を受けて入ってらっしゃるお母さん、それからどうも私たちから見ると精神疾患であるなと思いながら、実質的にはまだ病院に結びつかないでいらっしゃるようなお母さんもなど、本当に、入ってくるお子さんたちの背景は収集雑多でございます。
 それで私たち乳児院は何をしているかといいますと、生後5日目から7日目ですから、本当に首も据わらない、お臍も乾かない、そんな赤ちゃんの養育、それと一緒に、虐待を受けまして入ってくるお子さんは、脳挫傷、脊髄損傷、色々それらの障害を受けてしまっていたり、それから嚥下がうまくいかないので気道修正で食事をしなければいけないようなお子さんもいます。入所してもらうお母さん方のごく一部ですが、飛び込み出産ということで、出産に至るまでに一度も産婦人科のドアを叩いていない方がたくさんいます。
 ですから、子どもの母体での成育歴がほとんどわからない。上に、病気を持ってしまってとっても弱い。というのは、栄養状態がとても悪い状態で生まれているので、その後の発育なんかがとても弱い、ということがあります。医療的なケアを、私たちのところで保育士、看護士、指導員、栄養士がやっているのです。
 ただ私たちは、それらの子どもたちを受けて育てているだけでなく、ご家庭に返さなければいけないという役割を担っています。保護者の方々の支援というものに大変に力を入れております。それに虐待を受けた赤ちゃんは、養護施設のお子さんとはまた違った形での、大変に苦労があります。まるっきり物が言えませんし、言えなくなっている精神状態を持っております。私のところに入ってきたお子さんで、椎名さんの『凍りついた瞳』、あのまんまの顔をしたお子さんが入っていらした。そういう子どもたちは、触れようとすれば火がついたように泣くわけです。どうやってこう、一皮一皮柔らかくしていくか、日々の積み重ねしかないんですね、今のところ。そんな形での子どもの受け入れには今大変苦労しております。
 そういったところで、今のところ乳児院では子どもの命を守ろうということ、少ない人手の中でも子どもの愛着関係の重要性を意識しながら、個別的なケアをしていこうということと、関係改善を図って子どもの発達の支援をしていこうという形で取り組めております。少し説明をさせていただきましたので、私たち乳児院が今後どういうふうにしていってほしいかという話を少しさせていただきたいと思います。要養護児童につきましては、緊急一時保護ですとか、処遇を決定するまでの一時保護ということで、施設入所で保護者の同意が得られず、児童福祉法の28条、家裁の審判が下るまでの一時保護。一時保護ではいろいろあります。普通一時保護と言われる場合では、児童相談所でされているのが通常です。ただ、2歳未満の乳幼児につきましては、一時保護所では対応ができないということで、皆、乳児院に。乳児院も最近満杯になってきておりまして、最近都市圏では、里親さんにお願いするということも出てきてはおります、けれども、こういった形で、緊急一時保護を受けております。そうしますと、それはまった無しで、夜中でも、警察の人が付き添って、入所させてくる場合もありますし、お母さんが逮捕されてしまえばその場で子どもは引き上げざるを得ないわけですし、それから、遺棄されてしまったような赤ちゃんですと、一旦は病院にとは言うんですが、なかなか病院が受け入れてくれなければ、またそのまま、どんな子どもでどんな状態だがもわからない赤ちゃんが、園に運ばれてまいります。
 そして、虐待での子どもが引き上げとなれば、またそこで子どもたちは、何にも状況がわからないまま、受け入れるのが今の乳児院でございます。虐待により、児童福祉法28条になったケースでは、大変に一時保護期間が長期化します。私が去年経験しましたのは、28条で入ってまいりましたお子さんが、児童相談所が28条をかけましたところ、お母さんが、不服申請を申し立てられまして、児童相談所と、裁判所で裁判になってしまいました。そうすると、その間私どもはおぼっちゃんをお預かりしていたのですが、そのうちに家裁のほうから突然、面会をさせたいということが裁判官のほうから指示が出てまいりました。じゃあここで指示が出て、どこで面会を始めるのかな、うちは一時保護をしているのである、児童相談所か家裁かなんかでの面会なのかなあと思っておりましたら、乳児院で、施設長のもとでの面会を義務付けますといわれて、私はなぜ親権の代行権もないような状態でそこまでやらなければいけないんですか、といいましたが、それはやってほしい。そして、親御さんのただの面会だけでなく、養育支援も行ってほしいと、いわれました。その子が1年間、決定が下されるまでかかりました。やっぱり乳児院の特別な一時保護をするというのは、虐待のことを絡めますと、緊急介入機能としての緊急一時保護としての位置づけをしていただければと思います。

<平湯> 
ちょっとお時間を頂いて、衆議院の水島先生、青山先生、お願いします。

<青山二三議員> 
皆様本日はご苦労様です。衆議院議員の青山と申します。今衆議院で、青少年問題特別委員会の委員長をさせていただいております。3年後の見直しということでございまして、この児童虐待防止法につきまして、色々と議論を始めています。これはやはり3年前に、青少年問題特別委員会で議員立法として成立いたしました。そのためやはり、ここで改正をということで、皆様方の大変な熱いご要望を受けまして、私どもも毎日毎日勉強させて頂いているところです。昨日の参考人質疑で、今日お見えの平湯先生それから坂本さんにもおいでいただきまして、大変すばらしいご提言を頂きました。これから精力的に皆様方のご要望を受けまして検討していきたいです。すばらしい見直しができるように、ということで頑張ってまいりたいと思います。

<水島議員> 
続きまして、皆様本日は本当にご苦労様です、衆議院議員の水島広子でございます。このような緊急シンポジウム、多くの皆様にお集まりいただきまして、心強く思っております。今委員長がご挨拶されましたけれども、私も青少年問題特別委員会野党側の筆頭理事という立場をさせていただきまして、委員長ともども、委員会の充実した運営のために努力をさせていただいているところです。
 昨日は参考人招致ということで、平湯先生と坂本さんにもお越しいただきまして、また全国の児童相談所の所長会の会長さん、施設協会の会長さんにもお越しいただいて、これであとは視察でですね、委員長のご理解を頂いて現場と自立援助ホームと、そこまできちんと見てくることができれば、なかなか日ごろこの問題に疎い国会かなとも思いますけれども、多くの議員にこの現状を知ってもらうことができるのではないかと思っております。
 私、もともと精神科医で、実は虐待されていた子どもたちが施設に行くまでに生き延びた子どもたちを見ていたり、実際に自分が虐待をしてしまっている親を見ておりました。そんな立場でしたので、今回の改正、本当に実のある改正をしなくては意味がないと思いまして、私たちが今まで3年間考えてきましたように、本当に重大な形での親権の停止のあり方、また虐待をした親へのケア、親の立ち直りのためのきちんとしたケアをしていくということ、それから皆さんが本当に一生懸命に取り組んでくださっているにも関わらず、人員が不足しているという現状なので、これは施設であれ里親であれ、専門性を持った人員をもっと充実させていくことや、何といっても虐待の予防、虐待と普通の子育てというのは本当に紙一重のところにございますので、これは日ごろから子育て環境ということで私はずっと厚生労働委員会でもずっとやっておりまして、頑張っております。
 とりわけその親権のことに関しては私は譲れないと思っておりますが、そんな改正ができますように、今日は委員長もいらしてくださっているので、力を合わせて、これは本当に党派を超えて頑張ってまいりたいと思っております。ぜひ皆様、今後ともきちんとした改正に向けて、全国の隅々からご支援いただけますようお願い申し上げます。今日はありがとうございました。

<平湯> 
それでは乳児院の話を続けてください。

<長井> 
では、話を続けさせていただきます。なぜ、緊急一時保護だけを受けていてはだめなのか、ということを言いますと、定員を超えて一時保護を受けるということになるため、どうしても、緊急一時保護を受けた分が、みんな、入っている定員の子どもたちのしわ寄せになってしまうという問題があります。そのため、何か特別枠をしてほしいのです。
 それから、施設の役割というのは、第一に命を守ること、安全な場の確保っていうふうに私は考えておりますが、子どもが過酷な環境の中から守られて、心も体も癒されて、ほっとできる生活を作る、ということが健全な成長の手助けになるだろう、というふうに私は考えています。それができれば人との信頼関係をもてて、自分を愛せる子どもに育つ。それは結果として大人になったときに、自分の我が子を持ったときに愛しいと言って抱きかかえられる。そんな大人に成長できるんじゃないかって私は考えております。
 平成9年の児童福祉法の改正では、乳児院は、おおむね2歳未満の子ども、というような、入所させる施設、ということになってしまいました。2歳という年齢は、一番分離不安の強い年齢です。その時に措置変更を固定されてしまったというのは、私は、その子どもたちの心身の健やかな成長と、発達の保障という意味では、辛いことでございます。ましてや1歳近くで虐待を受けて入ってまいりました子ども、たった一年たらずの時間で、心を元の状態に戻して、ということなんかとてもできません。それもできない状態の中で、また次の施設にたらい回しがされる。もう私はこれにとても耐えられないです。それでいて子どもをちゃんと育ててくださいなんて言われたって、できないものはできないとしか言いようがありません。
 そうしますと、今までの乳児院の規模が大きいということがありますから子どもの養育の一貫性だとか、連続性を持たせ、生活空間を小規模にした小規模の養護施設を乳児院の中に作って頂きたいのです。これが私のお願いでございます。実は私、乳児院で横浜の施設を使いまして、去年、ファミリーグループホームというのを、乳児院型として作らせて頂きました。横浜の場合には、6人のグループホームでございます。そこのファミリーグループホームの長になられる人は、里親認定を受けていただいて、その上で、夫婦で6人まで子どもを受け入れて育てるということをやっている形で、横浜では10番目のグループホームになりました。そこでは、これまで養護施設としてのグループホームということでしたが、去年私のところが初めて、養護施設を持っていない単独の乳児院なものですから、どうしても養育の一貫性というものは望んでも望みきれない。それじゃ自分でやるしかなということでやりました。28条で入ってまいりました虐待の子ども2人を、まず最初に送り込むという形で、今3人の子どもを養育してもらうような形で、ゆっくりと土台固めをするような形で、また今年の6月以降うちから男の子を、これも長期になる、お母さんが精神疾患でもうどうにもならないものですから、ご家庭には帰れないもので、そのお子さんをお願いしようと思っております。
 それで、もしできるのであれば児童養護施設に乳児院をお作り頂いてもいいと私は考えております。その代わりに、乳児院にも、小規模の養護施設で、見られるような、見なきゃいけないような子どもたちを見させていただければ、私はとても嬉しいというふうに考えております。年齢で切るという今の法的考え方を、根本から変えないと、子どもを真中に据えての形での改正はできないのかなと思います。
 もう一つ、里親さんのことが去年辺りから嬉しいことに改正になって、里親制度ができたということは、私たち乳児院側から見ると、とても嬉しいんですね。これが拡大していってくれたらとても嬉しいことだというふうに私たちは思っております。家庭復帰率は、乳児院では70%と大変高いんですが、それでも30%の子どもたちは帰れないわけです。でもその中には里親さんに行ける子と、それからどうしても行くことを拒否する親御さんがたくさんおりますので、やっぱりそのためには、里親さんのところに、私たちの機能である、新規登録の里親さんの育児体験だとか、里親さんのレスパイトの場であるとか、里親家庭に委託する場合の交流から委託後までの相談援助ですとか、少し乳児院にもお手伝いさせていただきながら、とても広がっていけるのかな。里親さんとは喧嘩しないで連携を取りながら私たちは進めていきたいと思います。

<平湯> 
どうもありがとうございました。次は児童養護施設の話を伺いたいと思います。京都からお見え頂きました、桑原先生です。

<桑原> 
全国児童養護施設協議会副会長で、『舞鶴学園』園長を務めております。京都から参りました。私どもの施設は、一昨年の秋に、大舎から小舎に変えたところです。特に養護施設そのものが専門対策でスタートして、その間、貧困に始まり、不登校に始まり、サラ金のケースであるとか、いろんな要素を、それぞれの時代の要請にこたえてきた、そういう役割を果たしてきたんだろうとおもっております。
 ここにきて、虐待についてということで、今日のテーマは虐待でございますので、少なくとも私の施設から見た児童養護施設の状況を皆さんに若干お話しできたらなあと思います。全国に今550の児童養護施設がございますけれども、定員が33725名、現在30456名の子どもが、13年度の充足が90%を超えてしまったという状況が、今、あります。このことは、平成5年を一番の底辺として、充足がずいぶん低くなっていた時代に比べますと、信じられない状態でございます。私どもの施設も、平成5年6年、そのぐらいの時代には、終わりが来るかなというぐらいまで、児童の入所は減っていました。新しい施設を作ろうという踏込みをしたときに、まだ新しい兆しは見えませんでした。それから虐待、この5年間でうちが工事にむかっていろんなプランを立てて進んでいる最中に子どもたちは虐待虐待ということで児童養護施設に入ってくるようになりました。私は、今職員として今の施設で36年目を迎えます。平成元年から施設長になって、そして、自分が施設長になって養護施設にやってくる子どもたちに何ができるんだろう、ということを考えました。その時に、自分の方向性を後押ししてくれる子どもとの出会いがありました。短い時間を頂いて作文を読ませていただきます。
「今まで家族と言う言葉を信じたのは小学3年生までだった。影で親はどんなことをしていたかわからない。つくづく思うことは、何でここにおらなければならんの、ということで考えた。私は、親と別れる原因は作っていない。親だけの原因を私たちに押し付けている。今思っていえることは、大人は勝手だということしか考えられない。今は親の変わりに学園の先生だ。いろんなことを教えてくれる。今親に望みはないけれど、いるなら出てきてほしい。もう一度家族の勉強をしよう。親しかできない家族の勉強を教えてください。私は自立しなければならない。支えになるのは学園の先生しかいない。それまでに会いに来てくれるかな。家族の勉強できるかな。ずっと、自分が作る家族の勉強をして、親より立派な人間になってみせる。いずれ、私は家族の勉強を教える人になる。」という、こういう作文に出会ったのです。
 この子は小学4年生で入ってきて、この作文は中学2年生の時のものです。ちょうど自分の将来の、どういうふうになるんだろうという不安が募るという年齢です。そして、私は、こういう子どもたちに、家族ということをどうやったら伝えられるかということを仕事のテーマとしてきたわけです。ところが、ここにきて、虐待のケースがどんどん入り、そして、空きがあれば次々に入ってくる施設の状況があります。もう、息つく間もなく新しいケースに向き合わなければならない。しかも、虐待でやってくる子どもは、いろんな課題を負ってやってきます。一つ一つのケース、どうやって今の養護施設で対応していけるのか。被虐待の子どもたちは、今児童養護施設に、施設入所の中でも児童養護施設には平成12年で75,5%、平成13年度で70,9%、親子分離を余儀なくされた子どもたちが施設で暮らしています。しかも、平成13年度に入ってきた新規入所の5割以上が、被虐待の状況になっております。しかし、そういう子どもたちを受け入れる養護施設、そして、そういう養護施設の状況の中で、私どもが、家族の勉強をどうやってできるのか、といことを考えた時に、本当に今、パンクなんですね。何もしてやれないこの現実を、今僕らはどうやって打ち破っていかなければならないか。
 養護施設に入ってくる子どもたちの状況が、前の福祉新聞にもありました。日本子ども虐待防止研究会が捉えた実態調査では、処遇困難な子どもが増えている、これが98%。他の子どもに波及して混乱が生じ援助が難しくなっている、これが73%。施設の中で生活を作りそして作り上げていくその営みが、虐待の子どもを受け入れることによって目の前で崩れていきます。また一から作り直し、その繰り返しを今養護施設ではやっています。
 実はある性虐待のケースが入ってきました。これは、九州のほうからやってきて、京都にやっとやってきて、不安な様子で、今日どうしようというときに、タクシーの運転手が声をかけて、そんなに困っているなら今日はうちに泊まって職場を探しなさい。最初は善意だったようですが、結果的に母親が仕事を探しに行っている間に、中学2年生の子どもが性虐待を受けてしまいました。母親は知ってか知らずかそのまま行方不明になり、残された子どもたちは私たちの施設にやってきたわけですが、彼女は、そうされた行為に関して、許せないという思いを強く持ちました。そして、弁護士会と施設と児相と、訴えるということで訴えました。
 ところが、現場検証も含めて、触れたくない部分洗いざらいえぐられるように聞かれる。しかも、取調室からたまらなくなって、警察官が出てきて外で泣いている姿がある。あまりにむごい。そうしてやってきた子どもたちが、じゃあどうやって養護施設で息を吹き返していくのか。やはり、特定の信頼される関係があるんだよということを伝えなければ、施設生活を通して伝えなければ彼女は前へ進めないのです。そして、僕らは何とか高校に入れて、この勢いで社会に送り出そうとしたんですが、いろんな出来事がありました。児相のケースワーカーと精神科医のミスマッチもありました。結果的に彼女は高校1年生で高校を中退しました。措置解除の話がすぐにありました。そんなことで許されない。とにかく18歳までこの子は何とか面倒をみなきゃ。そして、特定の職員が、休み関係なくかかわってくれました。そして、何度も職場を経験させながら、何とかこれで落ち着くかなと思っても不安になって崩れていく、繰り返し。そして、摂食障害を起こし、過食が始まりました。それが、集団生活の中であるんです。それを見てまた小さな子どもたちが、どうやってそのことを受け止めていくのか。これが養護の弱い部分かもしれません。
 そして、その個人をどうやって守るかという時に、実は、18歳が迫った時に、もう働いているんだから解除だよということを、言われました。何とか誕生日ぎりぎりまで頑張ろうということで、4月最初の誕生日でしたので、18歳、普通でいえば高校卒業年齢までで、送り出しました。その送る時に、あなたを本当にお祝いして送り出したい、考えられることを精一杯やって彼女を送り出しました。そして、措置解除の日がきて、彼女は次の日、自殺未遂をしたんです。もう舞鶴学園と切れてしまうという不安なんですよ。私のとこは絶対切れないよ、あなたの部屋はこのままにしておくからね。帰ってきてもいいんだよっていうことは言ったんだけれども、現実にそういうことが彼女に重くのしかかって、彼女は不安になってパニックを起こし、睡眠薬を飲んでしまった。 
 今、なんとかまた社会復帰をしながら、なんとかやっていますが、この子の人生に、この子の子ども時代に誰が責任をもつのか。これはやっぱりはっきりしなくてはいけない。18歳で児童福祉からは切られてしまいます。養護施設は今入り口の部分です。しかし出口がないんです。入ってきたらそれで終わりなんです。その子の人生に大きな意味が、そこで問われるんだろうと思います。
 そこに携わる職員の実態。次々とバーンアウトしていく姿があります。本当に志を抱いて、胸膨らませたはずの職場で、傷つけられ、こんなはずではなかったと言って職場を去っていく職員の姿があります。昨日大阪で、施設長さんから話を聞きました。身体的虐待を受けた子どもが、目の前で職員を殴り倒していく。子どもの権利擁護って何だろう、大人の権利擁護さえできないんだよ、という報告もありました。何とかこういう部分を支えていただきたい。そのために、人の質も問われますが、児童福祉法の最低基準、26年間、昭和51年から変わっていません。"6対1"。学童六人につき職員1人。このことは変わってないんです。手がつけられていない。こんな状況で、子どもなんてとても関わっていられないんです。目の前で殴られているけれども、一定の距離を置くしかない状況が、施設にあるということ。まずは知っていただきたいと思います。そして、抜本的な改正をそこにこぎつけてい頂きたいと思います。

<平湯> 
北川先生、ちょっとお先にご挨拶を頂きたいと思います。

<北川議員> 
今日は皆さまお疲れ様です。私は社民党の北川れん子と申します。衆議院におりまして、今内閣委員会では少子化社会対策基本法を審議している途中でありますが、先ほどのお話もお伺いしておりまして、やはり、生まれた後で、虐待の問題であれば救出した後、どう大人たちがサポートできるのかということが、より今回は問われていると思います。今日は皆様方の資料集を見せていただきまして、三年前、一番、子どもの権利という言葉を入れる入れないでもめた、という話も伺っております。ぜひ今回の改正で、皆様方の熱意が、本当に法案の中に形として実現するように私たちも頑張らせていただきますので、ぜひ力強いお知恵のほどをお願いいたします。ありがとうございました。

<林議員> 
皆さん今日はありがとうございます。日本共産党の参議院議員の林紀子でございます。先ほど社民党の福島瑞穂議員からお話があったと思いますが、参議院では、共生社会調査会というところで、一年間この児童虐待について調査を進めてまいりました、そして、いよいよ昨日から、衆議院の青少年特別委員会でこの虐待防止の改正の論議が始まりました。私たちも、決議をあげたり、それから昨年の本会議では、中間報告という形で、一年間勉強してきたものをまとめて、本会議では、会長さんのほうから報告をしているわけですが、そういうことも含めて、改正に反映ができたらと、思っております。
 そして、実は共生社会調査会で決議をあげるにあたって、日本共産党は反対だという話が一部にあったかといように聞いておりますが、これは手続きの問題で、みんなで一緒に決議をあげましょうというところがはっきりしないまま進んだということに対して、ちゃんとそれはやったほうがいいんではないか、ということを申し上げただけで、私たちは、本当に三年目の見直しということで、きちんと見直しをしていくということはどうしてもしなければいけないと考えております。
 そして、その決議につきましても、後ほど、野党の筆頭理事からお話があるかと思いますが、その決議というものを参議院ではまとめましょうということになりましたが、私たちは、今までもお話がありますが、子どもの人権、それをぜひ入れるべきであるということは、ありましたので、それはぜひ入れなければいけないと思っております。
 それから、今お話がありまして、本当に重い問題だということを改めて思ったわけですが、性的虐待、これについては、どうしても刑事的な部分もきちんとやるし、それから児童福祉法の34条の部分もきちんと考え直していかなくちゃいけないではないか、といことも提案をいたしました。
 また懲戒権の問題というのは、これは、この児童虐待防止法がスタートする時から、衆議院の場でも問題になっておりましたので、民法改正というのは、色々ありまして、女性の問題では、別姓ということすら反対ということでなかなか進んでいきませんので、この懲戒権ということがどういうふうに進んでいくかはわかりませんが、これはきちんといつでも掲げておいて、これは問題にしておかなくてはいけないという提案もしているところでございます。
 私は、アメリカの『シーラという子』という本を読みまして、やはり虐待というのはまずその時に助け出さなくてはいけないけれども、ずっと子どもたちの自立、本当に一本立ちしていくということは、心の問題も含めて、大きな問題だということを、身に沁みて感じました。今のお話からも、そんなことを感じました。ぜひこういう重い問題をきちんと取り組んでいきたいと思います。

<平湯> 

桑原さん、もう少しお話を続けて下さい。

<桑原> 
今職員の問題をちょっと話させていただきましたが、施設にやってくる子どもたちがなぜやってくるかということは、結局、自分が人との関係をきちんと学ぶ機会を失って入ってくるわけで、子どもたちの背負って、というマイナスの部分をどうやって取り除くかということがあると思います。虐待は、愛着障害を生むといいます。そして、自分が起きた虐待を再現するという傾向があるといわれております。そういう子どもたちに、子ども時代にできるだけそういうことを払拭できるシステムが必要なんです。施設に入れても何も解決しないんです。施設でできることはもちろん精一杯やっていかなければいけない。しかも、いろんな課題が施設にはあります。ただ、仮の住まいなんだろうかなと、私は時々思いながら施設で仕事を暮らしてきました。
 もっと子どもって大事にされなきゃだめです。普通子どもは、家庭で、親がいて、兄弟がいて、家があって、何かがあっても引き受けてくれる人がいて、それが今では理想形かもしれないけれども、基本形だとするならば、それがやはり施設になきゃおかしいじゃないですか。きちんと根を張らなければ自立って言うのは僕はできないと思います。生活がそこにあって、その生活に根を張れたら、おそらく虐待を受けた子どもたちも、そこからまた踏み出すことができると思うのです。
 住環境そして、職員のバーンアウト、このことはどうにか改善していただきたい、ほんとに長年の思いです。だけれど施設は今自助努力をするしかないんです。そして、施設で大きくなった子どもが自分の進路を考える時に、18歳で切れてしまう、後に何の手立てもない状態の中で、施設が、大学に行かせ各種学校に行かせ将来を応援している、そのことがほとんど評価されないできているそのことも、もっと見ていただきたい。施設は確かに密室的な部分があります。独善的になりやすい部分があります。それは大いに反省しなければいけない点でもあります。私は今、新しい施設を作り、規模を小さくしましたが、分けて形態を変えても、職員の質がそこで求められて、大人という羅針盤がいつも必要なんですよ。それが今まで自然に営まれてきた、はずですよね。これからの養護施設で家族の勉強ができるのか。それができるようになるためにも、どうぞ皆さんの力を貸していただきたい、応援していただきたいと思います。

<平湯> 
次は、里親家庭の坂本さんからお願いします。

<坂本> 
アン基金プロジェクト事務局長の坂本和子です。東京都の養育家庭を20年させていただいております、今、先生方から色々な養護のお話をうかがわせて頂いておりますが、結局、里親も含めて、子育てということをやっているわけですが、その目標というのはひとりの子どもたちの自立って言うことだと思うんですね。私ども里親というのは、自分から手を挙げて里親になっている者たちでございます。熱意は養護施設や乳児院の先生方と同じぐらいございます。ただ、有償ボランティアという形だと思っています。各自治体の制度にのっとって、里親登録をさせていただいて、子どもさんを児童相談所から引き受けして、育てていく。一番違うことは、18歳で措置解除になるということは、児童福祉法で決められております。ですが、里親の底力が出るのは、実はそこからなんです。関わった子どもをずっと見守りつづける。その見守りつづけ方は里親さんによってできる力が違いますので、どう見守りつづけるかはわかりませんが、とにかくあなたをずっと見守っているからね、何か困ったことや嬉しいことがあったときには何か言いにきてちょうだいね。そういうつながりを持つということが、やっぱりその子にとって、一人の人、あるいは一組の夫婦と言ったほうがよいかわかりませんが、そういう存在が人間の子には必要なんですね。大人になってもそういう人は必要だと思うんですよ。そのことを担わせて頂いていると思っています。
 この虐待防止法が3年前にできました時に、実は私ども里親界の中にすごく衝撃が走ったんです。といいますのは、ただこの子をお願いしますということで今まで受けてきたわけですが、この虐待防止法に虐待の定義というのが4つございますね。それを読みますと、今まで私どもが受けてきた子どもたちがこの中に入るよね。これは、大変なことを、私たちは素人と言われながらやってきたんだ。それならばこれは、黙ってはいられない。今まで社会の片隅で、ただ手を挙げて黙々とやってきたわけですが、これは私たちも、やはり声をあげていかなくてはならないのではないかと思いました。
 丁度その前に、私ども東京都の養育家庭の有志25名で、自立に向かわせるというのが、なかなか18歳で切られても、うまく社会に乗り出せていけないという問題が生じて、東京の里親会でも議論いたしまして、でも、里親会ではなかなか力が出せませんで、その有志たちで、アン基金という、自立支援基金のお財布を作りまして、それで助けていこうと。一人の里親で担いきれなくても、集団だったらできるんじゃないかということで、アン基金プロジェクトというのが、今5年目になりますが、活動しております。その者たちで、やっぱりこのことは、里親に無関係ではないんだということで、里親の体験を様々なところで話させていただいたり、このようなちょうど3月にできたんですけれども、里親体験シリーズということで、今まで虐待ということは意識してなかったんですが、やっぱり里親家庭で育ててきたという体験を記録して皆様方に、わかっていただきたいと思いまして、このような本にして発行しておりま。あとでご希望の方は私のところに言っていただけましたら送らせて頂きます。
 1、2例申し上げますと、例えばこの本の中に出ていらっしゃる里親さんは、ご姉弟を受けたんですが、児童相談所がその子たちを引き取りにいった時には、アパートの中が、カップラーメンその他の食べ物、汚物、そういったものが全部床に散乱していた中に、弟のお子さんはどうにか元気でいらしたんですけれども、十歳のお姉ちゃんは半分餓死状態で、そのごみの中に横たわっておられたそうです。そこで、この姉弟をどうしようということで、里親さんは、私どもが大変に尊敬する里親さんですが、そういう子どもたちだっていうことがわかっても、自分で引き受けられたんですね。それで、特にお姉ちゃんのほうが大変、放置された、親に見捨てられたという後遺症で難しい状態で、興奮状態になりますと、里親さんに食卓の椅子を投げかけたり、おうちのなかの壁が全部穴だらけになったり、女の子なのに、ものすごい力が出るんだそうです。それでとうとうその里親さんは、子どもと会話をするときには、自然に、親指を中にきゅっといれて握りこぶしを作ってでなければお話をすることができない。といいますのは、その前に身構えていなかった時には肋骨が折れたりとか手が折れたりとか、本当に様々そういうことがございましたので、それで、頑張られて、両方とも三十歳前後におなりになりました。弟さんのほうはそういう傷が浅かったので、福祉の大学を卒業して、今も自立しておられますし、お姉さんも、後遺症があるので難しいんですが、ちゃんと一人でアパートを借りて、仕事をしている、というところにやっとなったということです。
 18歳で措置解除になったからはいあなたたちさよならよ、ということは里親は言えません。ですから、ずっとその子たちの親代わりをしています。ほとんどの里親たちはそういうふうにしております。もちろん短期の依託のお子さんたちもいらっしゃいますけれども。そういう素人の熱意だけでやってきてしまったところが、良かったのか悪かったのか、これからは、虐待防止法もできたわけですし、難しいお子さんだということがわかっておりますから、ぜひ里親を、そういう熱意がある者たちでございますので、助けるシステムを作っていただきたいんです。それが、児童虐待防止法、あるいは児童福祉法の改正だと思っているんです。
 特にこの、児童逆防止法の改正につきましては、お手元の資料をごらんいただければと思いますが、先ほど先生方にも言って頂きましたけれども、子どもの人権を擁護する法律であるということを、明記していただきたいんですね。そうでないと、場当たり的な法律になっていると思うんです、今の状態では。 
 で、どうしても、親御さんと子どもの人権が対立関係になる場面が、必ず生じます。その時に、私どもは子どもを守るんだというところに立ちたい。
 それから、次の頁には、虐待通報があったときには、迅速な動きをしていただきたいということで、法律には『速やかに』という言葉しか入っていないんですけれども、これは具体的に、何時間以内にということを、全国一律に決めていただけたらと思います。
 3番目に挙げさせていただきましたのは、今日は児童相談所の先生が来ていらっしゃらないので、私が変わりに代弁するのもおこがましいと思いますが、今児童相談所の先生も本当にみな、施設の職員の方たちと同じで、バーンアウト、ノイローゼ、この仕事が続けていけない、休職を取る、退職する、というように陥っているそうです。それで、それはどうしてかといいますと、児童相談所の先生が、今の児童福祉法の法律では鬼の顔と仏の顔の両方を持たなければいけないように、なっております。鬼の顔というのは、通報を受けて、親のところに行って、確かに虐待をしてたからにはその子どもさんを親が連れて行くなと言ってもどんなにしても連れてくるわけです。そうすると、親御さんたちは、児童相談所の先生は鬼だと、自分の大事な子どもを連れ去っていって、と思っちゃうわけですね。その後に、一時保護の確立いたしましてから、もう一度今度親御さんのところに行きます。あなたのお子さんは、このぐらいの期間、こういうところに置いてありますよ、だから安心してください。その何ヶ月、何年の間に、あなたが虐待をしないような親に立ち直ってもらいたいんだと、こういうプログラムがあるんで受けませんかと言っても、もう、鬼のような先生がまた来やがったということで、全然言うことを聞かないんですね。ですから、ここに親権の濫用とまでは言いませんけれども、非常に日本の親の親権が強いので、私ども素人の考えでお恥ずかしいことですが、司法にタッチしていただきたいんです。判事さんが、あなたはこういうような状態だからこういう一定期間こちらで預かりますよ、だからその期間、あなたも、あなたが立ち直るプログラムをあなたにも色々苦しいことがあるでしょうということで、そういう言い渡しを、日本の権威のある方にやっていただけないと、児童相談所の先生に言って頂いても、全然聞いていただけない状態なのです。そこのところをぜひ交通整理をしていただけたら願っています。

<平湯> 
それで、参議院の羽田先生にお話をしていただきたいと思います。

<羽田議員>
 
皆さんこんにちは、民主党所属の参議院議員の羽田雄一郎です。狭い部屋で、立ってずっと聞いておられる皆さんもいらっしゃるということで、本当に、関心を持ってこの問題に取り組んでおられますことを、私からも本当に感謝を申し上げさせていただきたいと思います。私は長野県選出でこの国政に出させていただきまして、3年が経つわけですが、その前は、保育士の資格をもっているものですから、学生時代から養護施設にずっと通い続けていました。私は玉川学園を出ておりまして、そこに赤十字奉仕団というのがあって、養護施設、老人ホームに通って、自分の担当の子どもというのをつけて、一人一人と信頼関係をもちながら、自分のお兄ちゃんお姉ちゃんということで、子どもと携わってまいりました。その養護施設に来るお子さんの中には、やはり虐待を受けて、ろうそくで体中、どういう顔をしていたのかわからないような子どもたちもつれて来られている状況をつぶさに見てきました。
 国政に出てきて、そして今参議院の共生社会調査会の野党の筆頭理事という立場を得てこの児童虐待防止法についての取り組みをさせていただいたわけです。先ほどからいろいろな意見を聞かせていただきました。すべてがごもっとも。そして、われわれが一年間調査してきた、そして視察を続けてきた中で、感じていた問題は寸分も狂わないなという気持ちを持たせていただき、勇気をもたせていただいたわけであります。
 今、昨年の国会の中では中間報告を出させていただいたわけですし、まだまだ足りないと、まだまだ増えているんですね。そういう中で、われわれ共生社会調査会としましては、決議をして政府であるわれわれも含めまして、衆議院の青少年特別委員会で作ったものですから、衆議院に対してもしっかり提言をしていかなくてはならないんではないかということで、今日は実は、皆さんで、この会の前に、議事懇談会を開きまして、児童虐待防止法に関する決議を作らせて頂きました。これは、本国会中間報告に盛り込まれてですね、早期に法律を改正するようにということになっておりますし、実は昨日、チャイルドライン議員連盟というものがございますが、その総会の中でも、青少年特別委員会の衆議院の国会議員、そして、共生調査会の参議院議員も加えて、そのチャイルドラインが中心になってですね、皆でより良いものを作っていこうではないか、という話に、実はなりつつあります。実は、ずっと勉強してきて、調査してきて、ここが問題なんだと言われていることをそのままにするのではなくて、しっかりと衆議院の改正の時に入れられるようにするためには、そういうチャイルドライン議員連盟が中心になってですね、そこで議論を深めて、最終的には青少年特別委員会で議論されますし、その現場でもう一回三年後の法改正ということで、この臨時国会に出てくると思います。ですから、ぜひ皆様方のご意見を、どんどんと今お寄せいただきたいなと思います。必ず、今回で終わりじゃないんですね。ですから、次の3年後の見直しも含めて、どんどんと変えていく必要があると、私も養護施設の実態を見てきました。6対1という配置の中では、一度大人を信用できなくなった子どもたちが本当に社会に信頼をもって立ち上がれるかというと、とても養護施設だけに任せていくのは難しいことだと。やはり、カウンセリングを受けたりですね、専門家の方々としっかり連携をとりながら、やっていかなければならないとか。夜になるとですね、本当に一棟に一人とか、本当に甘えたい時期に甘えさせて上げられる大人がいないということで、すごくつらい思いを僕もして、そして里親の皆さんには大変なご苦労を頂いていると思います。やはり、今まではボランティアとして受けてきた、その子どもが実は児童虐待を受けてきた本人なんだとういことを突きつけられながら、本当に悩みながら、連携を取りながら、やって頂いていることを感謝申し上げます。とにかく今の法律はまだまだ変えなければならない部分、充実させなければならない部分。さきほど児童相談所の話がありました。今児童相談所は、結局子どもを親から取り上げる業務をする、親に対してカウンセリングさせてきちんと復帰させる、そういうことまで含めてすべて、児童相談所がやらなければならない。実は児童相談所の職員がノイローゼになっている。自分の子どもに虐待する方まで出ているというのが、話にはあるんです。そのぐらい厳しい状況の中で、今児童虐待と向き合っている方々がいるということを、忘れずに、しっかりと法律の中に、少しでも多く組み込んでいかなくてはならないということを、皆さんと話をする中で、ますます力を得て、これからも連携を取りながら頑張っていきたいと思いますので、これからもご指導いただけますようお願い申し上げて、ご挨拶に代えさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

<平湯> 
それじゃあ、自立援助ホームの遠藤さん、お願いします。

<遠藤> 
全国自立援助ホーム連絡協議会会長で、横浜市で『遠藤ホーム』という自立援助ホームのホーム長をしてる遠藤です。自立援助ホームと申し上げましても、ご存知の方ほとんどいないと思います。この説明をするだけで10分経ってしまいますので、皆さんのお手元に、ここにおいでになる椎名篤子さんが、ささやさなえさんと一緒にいろんな施設のことを描いている中の一つに、自立援助ホームのことを捉えてくださった漫画があります。これを読んでいただければ、自立援助ホームのこと、日々の生活、それから法的な問題、等々、全部描いていただいておりますので、ここでは自立援助ホームの説明は控えさせていただきます。
 自立援助ホームは大変お金がかかりますが、未だにまだお金がついてなくてですね。全国に23箇所、無認可のところを含めて23ヶ所、認可の降りているところだと21箇所しかありません。これは本当に叫ばれていますけれどもなかなか増えない現実がありますので、皆様のお手元に私たちが今回議員の方々に紹介をお願いして、国会請願をいたしました。それも皆さんのお手元にございますので、国会請願のことについても、読んで頂いて、省かせていただきます。
 まず、自立援助ホームというのは、15歳から20歳ぐらいまでの子どもが入ってくる施設です。そしてこれは、児童養護施設というのは、中学を卒業して働くことになりますと、原則的には、社会に出なければならない。それから、高校に進学した子は18歳、でやはり出なければならないという原則があります。私のところに来る子どもたちは、本当に酷い虐待を受けた子どもたちが80%を占めます。まあよくもここまで、という、こんな虐待ってありえないんじゃないかっていう虐待を受けた子まで、入ってきております。理由の一つにはですね、虐待を受けた子どもたちは、皆さんも少し考えていただければわかると思いますけれども、それこそ、自分だけがどうしてこんな思いを、ということを考えただけでも勉強が手につかない、それから、虐待を受けた子どもたちは、なかなか人間関係がうまくもてない。対人関係障害という、ところにまで、対人関係がうまくもてない。そうすると、施設での子どもとの関係がうまく取れない。職員との関係もうまくとれない。そうなるとですね、行き場所がないんです。そうすると、必ず新天地を求めるんですね。どっか新天地に行けば、自分を大事にしてくれる人がいるんじゃないか、自分と合う人がいるんじゃないかということで、社会に飛び出してしまいます。ところが、じゃあ新天地を求めたからといってうまく行くかといいますと、非常に対人関係がもてない子がいくら会社に勤めても決してうまく行くはずもなく、社会からドロップアウトし、非行を犯す子どもが出てきます。
 自立援助ホームは、そういった意味では、児童養護施設からだけではなく、自立支援施設、家庭裁判所、少年院、里親さん、一般家庭からと、あらゆる家庭からの子どもを受けております。本当に15歳から18歳で来るわけですけれども、先日新聞で、子どもというのはいくつまでかという質問があったときに、子ども側は25歳を自立の年と考えています。親側は30歳と考えております、という新聞記事でございます。それに比べると、施設に置かれた子ども、虐待を受けた子どもが15歳で、18歳で、一人住まいというのは、大変です。特に心に傷を深く受けた子どもが15歳でというのは。本当に、人格形成も発達の取り戻しもできないままに社会に排出されてしまっているというのが、現状であります。そういった子どもたちを受け入れる施設がどこにもありません。青少年問題特別委員会というものがございますけれども、児童までは児童養護施設に入ります。青少年というのを考えているところは、ほとんどありません。自立援助ホームだけが、受け入れることができる施設です。年に20632000円です。これは、施設の職員費も、施設の家賃も含めてです。そういった意味では本当に増えることができないんですけれども・・・。
 それからもう一つは先ほどから養護施設の先生からも提案がされていますけれども、子どもたちの年齢を、たとえば18歳で児童福祉法は横切りにしていくと、福祉の中で児童福祉法だけなんですね、横切りにしていくのは。障害者施設は横切りにされません。いくつになっても、障害者として認定されたら福祉を受けることができる。老人ホームのあるところまでは、100歳まで生きたら表彰されます。ところが児童福祉施設は、これは、18歳以上置いたら、罰せられます、というところまではいきませんけれども色々とあります。でもこれは考えた時に、本当に、青少年、子どもたちがいくつまでケアが必要なのか、本来はそれぞれの虐待を受けてきた子どもの具合、それから回復の具合によって決まると思うんですね。ところがそれは全然見ないで、やはり18歳になったら切られていくということが大きな問題であります。私は、この18歳の問題をどうにかしなければならなりと強く思っております。国際的にいって、児童福祉法というのはだいたい18歳ということになっておりますから、児童福祉法を18歳以上に伸ばすのは大変な困難ではないかと思います。 
 ドイツのように、青少年福祉法というものを設ければ、たとえば15歳以上、18歳以上、25歳ぐらいまでは、ケアをすることができるんではないかと。私は、議員の先生方に特別本当にお願いしたいことがあって、とにかく、青少年福祉法というのを設けて、虐待を受けてきた子どもたちのケアを十分にできるように、手厚く時間をかけてできるようにしていただきたいというのが、私の一番の望みです。

Ⅱ  会場発言

<平湯> 
ありがとうございました。予定が1時までになっております。ご遠方からもお見えです。今までのご発言もふまえてですね、アトランダムで指名させていただきます。大阪からお見えになった、大阪子どもネットのことを少しお話頂きたいと思います。

<前橋> 大阪ネットワーク
皆さんこんにちは、大阪から参りました、前橋と申します。今月、大阪ネットワークというものを立ち上げることができました。これは、全国ネットワークが昨年の12月に大きなパレードをされまして、そのことに触発をされまして、大阪でも子どもの虐待の防止、それから健全育成ということにも焦点をあてた人たちが、緩やかなネットワークを組んで、子どもの問題に対してかかわっていこうじゃないか。ということでネットワークを作りました。で、大阪では、大阪府の社会協議会が事務局を持っていただくということができましたので、この五月にネットワークをたちあげたときには、指導員さん、それから市町村の社協の職員の方、それから調査官、それから児童相談所、家庭相談員、家庭児童相談室の方、それから様々な研究者の方であるとか学校の先生、そういった方々にもお集まりを頂いて、大体200名ぐらいでシンポジウムを開くことができました。そこでは、虐待防止法改正について、JaSPCANの制度検討委員会の浜田弁護士さん、それから中央児童相談所の津崎哲郎さんに、シンポジストとして色々新しい情報をご紹介いただきました。そういうような形で施設とそれから相談機関、研究者、そしてそういうことを様々な分野でかかわっておられる方が、気持ちの上でがっちりと、だけれども組織的には非常にゆるやかに活動をやっていこうというようなことができるようになりました。ぜひまたいろいろなところでこういうことをやっていただきたいなと思いまして、ご紹介させていただきました。

<平湯> 
ありがとうございました。それから、見直しの関係では大変早い時期から、組まれてました虐待防止法の改正を準備する会のお話を、山根さんお願いできますか。

<山根> 児童虐待防止法の改正を準備する会
児童虐待防止法の改正を準備する会の、山根と申します。西宮に事務局を置いております。皆様もよくご存知かと思いますが、森田ゆりを代表としてやっております。私たちの会は、2000年12月に虐待防止法が制定されましてほぼ同時期に発足いたしました。今、全国に200人あまりの会員を抱えております。児童福祉の最前線で日々子どもとかかわっていらっしゃる方もいらっしゃいますし、本当に市民の立場から、何かお役に立てればということで会員になって応援してくださっている方もおります。最初にアンケートを取りまして、そういう市民の方の声を、代表の森田を通して、なんとか国会に声を届けたいと思いまして活動を続けてまいりました。
 以後、年に2,3回、ニュースレターを発行したり、シンポジウムを開催したりして、市民の虐待防止法の改正に関する意識と認識を高めていく役割をやっていきたいと思っております。私も、ずっと事務局の仕事をしておりまして、それから去年からニューズレターの編集にかかわるようになりまして、本当に現場の方の大変な状況というものに接しました。ある家庭児童相談室の方が、法的根拠がないばっかりに虐待のことをキャッチして現場に出ていっても、あなたたち何をしに来たのと言われることもあるんですよ、とおっしゃいました。 
 先ほどからたくさん、養護施設の人員配置のことを言われていますけれども、ある養護施設の職員の方が、本当に目の前の子どもが今自分の力を必要としていて自分も今手を差し伸べてあげられる場所にいるのに、他の子どもとかかわっているためにそれができない。だからしょうがなく、本当に言いたくないんだけれども、ちょっと待ってね、をついつい言ってしまうんですよね。そういうときの、ちょっと待ってねと言わなければいけない私たちの気持ちがわかりますか、と言われたことがあるんです。以来私は、こういう現場の方たちの声を何とか国会に届けるのが、おこがましいんですけれども私の役目だと思って、活動させて頂いております。今、国会の中にもお邪魔しまして、議員の方の勉強会にも参加させて頂いて、改正の準備、色々お手伝いさせて頂いております。これから具体的な条文に沿っての改正作業に入ると思うんですけれども、そういう作業もお手伝いさせていただきたいなと思っております。
 皆様も、具体的に、絶対ここをこうしてほしいという希望がおありだと思うんですよ。どうか私たちの事務局のほうに、FAXで、お寄せいただきたいと思います。具体的な改正のこともあるんですけれども、皆さんそれぞれの立場から言ってくださったんで、二点だけ私たちから付け加えさせていただきたいんですけれども、本当に、この法律には目的以上の明記がされていないということで、"子どもの人権の擁護"、ということをぜひ入れていただきたい、ということと、もう一点、学校教育の場における予防啓発、そういう研修の実施ということをぜひ織り込んでいただきたい、ということをぜひ述べたいと思います。学童というのがなんだか抜け落ちているような気がするんですよね。学童においては、地域コミュニティとして学校というものが非常に重要だと思うので、そこに本当に家庭と子どもと学校、そういったものが一体となって、研修を受けるということの必要性を、本当に声を大にして言いたいと思います。どうもありがとうございました。

<平湯> 
山根さんは今、さっき話に出たチャイルドライン議員連盟の事務局のお手伝いをしていただく形で、いろんな議員の方に資料を届けたりつなげたり、という貴重な活動をしておられます。それから、次に、神奈川県の、伊勢原中心に地域のネットワークをしておられます、山田久美子さん、お見えですか。共催団体の、子どものネグレクト防止ネットワークというグループを伊勢原を中心にしてやられておられます。

<山田>
 子どもの虐待ネグレクト防止ネットワーク
神奈川県の伊勢原から参りました、山田と申します。今ご紹介にありましたように、特定非営利活動法人、子どもの虐待ネグレクト防止ネットワークの理事をしております。われわれは活動報告というよりも、今日のシンポジウムでは、保護された後の法改正、という論点が主だった思うんですが、私の方は、ちょっとずれてしまいますけれども、入り口のほうに、一応虐待防止法ができてなんとか整備されたとはいえまだまだ不十分だと思うんですね。今、個人情報保護法等のかねあいもあって、虐待かどうかを判定したり、虐待だった場合にどういうケアをしていこうか、ということを話し合う場として、ネットワークミーティングというものを、多分皆さんも各地で行っていると思うんですけれども、そういうときに、機関間を個人情報が流れるわけですね。そのことが、個人情報保護法との兼ね合いで難しくなるんじゃないかなと思いまして、ネットワークミーティングの法的根拠を、法改正のほうにぜひ盛り込んでほしいということです。一つだけ資料を読ませていただきたいんですけれど、アメリカにはたくさん子どもの虐待に関するテキストブックがありまして、一番権威があるとされているのが、『バタードチャイルド』というものなんですけれども、その第五版を、子どもの虐待防止センターの理事長の坂井先生が訳してくださっています。もう少しで出版される予定です。その中で、一部私が今申し上げたことに関する、アメリカでは20年位前のものですけれども、記載がありますので、『ザ・バタードチャイルド』の第七章にあるんですけれども、読ませてください。これは、CPSというのがアメリカにありまして、名前が州によりまして変わる場合がありますけれども、児童保護局、児童保護サービス、とうい部署があってですね、そこが虐待を主に扱う、日本でいう児童相談所のような仕事をしています。そのCPSの、歴史についてかかれている章にある文章です。1962年に、ケンプという医師がバタードチャイルドを提唱した後に、CPSの活動が活発になっていくわけですが、それから20年後、1980年代ですが、CPSの職員は家族のヒストリーや、最近の家族状態を詳細に知るためには、また、虐待やネグレクトを受けたとされる子どもがより有効な待遇を可能にするために、医学、法律、学校、精神保健のスタッフの助言を受ける必要があることを認識するようになる。ところがその時には、アメリカのほうで個人情報保護法がありましたので、しかし個人情報の保護を制限する法律の存在がCPSのスタッフが家族の了解を受けることなく、他と議論を交わすことを妨害した。現実にはCPSに通報があった、虐待の通報があったことを家族に伝える前にこそ、専門家からの助言が必要なのであり、そもそもこのような家族には実際にはそのような専門家からの助言を許可することなどほとんどありえないのであるから、この個人情報保護法は、専門家の意見を聞いてはいけないということとほとんど同じであった。ということで、今の日本の状況と、20年前のアメリカと、ほぼ同じ状況だったわけですね。その打開策として取った方策というのが、このような不合理な状況において、他職種の専門家からなる虐待チームというものを設置して、その虐待チームがもつ役割に正式な公的権限を授与する法律を、各州ですけれども、制定したということがあります。ぜひ、多機関があるケースについて情報を共有するためのネットワークを、これはケースごとに構成員が変わりますけれども、これに、法的権限を持たせて、底に守秘義務を課すことで、個人情報を保護するというシステムをできるだけ今回の改正で盛り込んでいただけたらなあと思います。

<平湯> 
ありがとうございます。JaSPCAN=日本子ども虐待防止研究会の、理事をなさっておられる、和歌山からおいでの小池先生お願いします。

<小池> 日本子ども虐待防止研究会
JaSPCANというのは、もともとは学術面での、ということで始まったわけですが、現実に対応に負われて、いろんな職種の方が集まった会だということで、学術集会をやっておりますが、そのたびに毎回3000人ぐらいの人が集まるような会でございます。平湯先生を大将とする委員会がございまして、そこで関西と関東と、ジョイントでずっと繰り返してきて、例えば児童相談所でどういう問題があるかとか、施設でどういう問題があるかとか、報告書をまとめてきて、それに基づいて全体のまとめをやってきました。その一つの活動が、今日の平湯の活動になっておるのだろうと思っております。そのほかには、法律の上でどういうふうに改正したらよいか。例えばイギリスでは、ドイツではフランスではどうなっているのかということを色々調査して、それを取り上げていくという役目を、ここにいます、松井一郎副会長がやっております。時間がないそうですからこのぐらいにしておきますが、皆様の、拝見するたくさんの力を頂きまして、先ほどから大阪相談所の津崎さんの名前も出てますが、そういう力で厚生省、あるいは対策委員会としての働きをやっているところでございます。あとちょっとで、先ほどおっしゃったように、臨時の議会で決まるだろうということで、だいたい6月の初めまでに、厚生省の案ができてくるみたいで、それを期待しているところです。

<平湯>
 
ありがとうございます。それから、地域の活動で、世田谷のことをご紹介したいと思います。資料はお配りできませんでしたが、帰り際にお受け取りください。

<子どもの命のネットワーク> 
子どもの命のネットワークは1968年に、いじめよとまれ、というシンポジウムを、民と官の壁を取り払って子どものことを中心に考えていくいろいろなグループや個人や様々な立場から集まった人たちが一回作る、ということで始まりました。その時、事務局長をやっていたのが、その時たまたま世田谷で教育の活動をしてました、今の衆議院議員の保坂直人さんなんです。
 そんなことからわれわれの中に、いろんな現場があって、今回虐待防止法を見直すという中で、私たちもこれだけいろんなネットワークがある中で、自分たちの中で確認しながら、一つもっともっといいものを作っていきたいということで、虐待防止をもっともっとましなものにしたい、というタイトルでシンポジウムを6月29日、日曜なんですけれども、午後下北沢でやることいたしました。世田谷の中には、自立援助ホーム憩いの家だったり、それから虐待防止センターがあったり、それから児童相談所があったり、弁護士の方々、それから法律を作る立場から保坂さん、皆さん参加して頂いて、私たち本当に素人なんだけれども、みんなで共有していく会をもって今日これをもってきたんですけれども、入り口の所に置かせて頂きますので、お帰りの際に取っていただけたらと思います。たくさん参加していただいたらと思います。

<平湯> 
次に、多摩地区で活動しておられる、ネットワークたまの方、どなたがおいでいなっていますか。

<酒井> 子どもの虐待防止ネットワーク多摩
こんにちは、事務局を担当しております酒井と申します。子どもの虐待防止ネットワーク多摩、というのは、4年前に八王子で起きた幼女虐待死事件をきっかけに、二年前に設立したばかりのネットワークです。市民レベルで、市民にできる予防啓発活動をやろうということで、ささやかですが、多摩地区で頑張っております。昨年私たちの地区で、通告の義務に関する市民アンケートというのを取ったんですけれども、その時に、約300名の方から回答を頂きまして、わかったことが色々あったんですけれども、通告の義務を知ったというのが、児童福祉法でではなくて、虐待防止法ができてこの三年以内にマスコミを通じて知った、という方がとても多かったです。そして、子どもの虐待に関心がありますか、という質問に、80%以上の方が、あると答え、市民に何かできることがありますか、という質問には、ほぼ100%の方ができることがある、とはっきり答えております。これは、私たちにとってとても心強いことだと思っています。来年は、子どもの権利条約を日本政府が批准してちょうど10年になる年なんですけれども、この条約の理念というのは、子どもの最善の利益をはかる、ということだと思います。このことをどうか、掛け声倒れに終わらせないように、私たち市民にもっともっと関心をもっていただくように呼びかけてほしいし、市民も巻き込んだ、国民全体で子どもの虐待を防止に向けて一緒に頑張っていこうと思います。よろしくお願いします。

<平湯> 
東京の、子ども虐待防止センターの関係の方、どなたかいらっしゃいますか。あと、関西からお見えの里親さんのかたがいらっしゃると思います。

<あしや> 養育里親
始めまして、大阪から参りました、あしやと申します。里親を始めてから25年目になりますけれど、その間いろんな子どもたちをお預かりして、先ほど、坂本さんがおっしゃったように、私たちは、虐待された子どもたちがほとんどだということを痛感しているわけなんです。それを、全然支援のないまま、自分の家族だけで、それから同じ里親だけを頼りにやってまいりました。このまま進んでいってしまってはいけないと思うんです。里親数が低迷しているのはそこらへんに原因があるんではないかと思います。これから里親になりたい方たち、その熱意だけではどうにもならない部分もいろんな形できちんと知って頂いて、お伝えしたいと思います。

<平湯> 
椎名さんは何かありますか。

<椎名> 『凍りついた瞳』『新・凍りついた瞳』 作者
椎名篤子と申します。80年代から、虐待の勉強をしてまいりまして、この全国ネットが立ち上がるのを機にお手伝いを始めましたけれども、以前、『凍りついた瞳』という漫画で、虐待について情報発信ということをしましたが、今回、『新・凍りついた瞳』ということで、ささやかな連載を行っていました。死亡事例、児童養護施設、自立援助ホーム、母子寮、それから最後には法医学の役割ということで、テーマを5つに絞りまして、法改正に向けて結びついていくといいなということでやりました。たくさんの方にお話を伺って、連載の中で一番心に残っているし、また何とかならないかと思ったことなんですけれども。
 ある事例がありまして、一人の子どもが、三つの都市を家族と共に移動していった。そして三歳の時に最初の都市で発覚した。四歳、五歳と三つ目の都市まで行くのですけれども、三つの機関すべてのところで公的機関、保育所、地域の人が気がついていく。気がついていくけれども助けることができなかった。最後は本当に酷い亡くなり方をしていくんですね。一番最後は、食を絶たれ寝ることを禁止され、寝ると殴られる、正座させられるということなんですが、お父さんに殴られていたんですがその時に、子どもが、柱にぶつけられお風呂に叩きつけられ、亡くなるときにお母さんが異変に気がついた、その時に子どもは、お母さん何か食べれば治るから、と言って亡くなったわけです。
 非常にむごい事例ですが、その時に、裁判でお父さんは今実刑を受けていますけれども、裁判官は、まれな事例であり多府県を移動しているために、その最後の都市の行政に大きな責任は問えない、ということをおっしゃったんです。私が申し上げたいのは、本当に難しい事例だったと思うので、行政の責任を問うというのではなくてですね、なぜ死亡事例検討会がもうけられないのか、ということなんですね。熱湯をかけられて総合病院に運ばれていくところに児童相談所は立ち会っていながら返してしまって、それから児童相談所が一時保護をかけるのをやめてしまったりしているんですね。その子どもがなぜ、二年間に渡って様々な人の眼に触れながら、なぜ亡くなってしまったのか、ということの検証が行われなければ、子どもを救うことの方向の幾つかは見つからないわけですよね。ですから私の希望としては、都道府県における、あるいは政令指定都市における、死亡事例の検証解析の委員会を一つ設ける。そして、それを国に上げていただいて、国の中の方ではなくて、国が選定した、かなりの高い専門性を持つ方による、調査解析委員会を設けて、なぜ子どもを救えなかったか、いかにすれば子どもを救えたかということをぜひともしていただきたいと思います。それから、法医学の役割ということで今回勉強しました。児童相談所は、この子を保護するかどうかということで、大変な立場の判断を迫られるわけですけれども、大阪府と兵庫県において、河野朗久さんという大阪府観察医外科医がいらっしゃいまして、診断結果報告書というものを、府県の要請によって出しています。医師は、診断書は親族あるいは本人の要請でしか書けませんけれども、都府県のネットワークの要請によって、その子が性的虐待を受けたのか、身体的虐待を受けたのかを、兵庫県と大阪府に上げ、それを児童相談所がこれは被虐待児であるということで保護するということをやっているわけです。そういった、法医学者を、子どもの援助ネットワークの中に入れて、もちろん児童相談所等の職員が、傷を見る見方などを学んでゆくことと同時に、医師の診断結果をもって子どもを確実に保護するということが、大変に必要迫られている。本当に保護すること、死亡事例をきちんと検証してなぜ救えなかったかを図ることが非常に大切だと思います。

<平湯> 
今のお話は、集英社から出ております。それから最後に、この全国ネットワークの去年12月のビデオのことで、少しご説明させていただきます。

<木下> 
全国ネット事務局の木下でございます。大勢の方がお集まりいただきありがとうございました。今日はこの会場が40名から50名の定員で、資料を60部から70部用意しましたが、議員の方を除いても100名以上の方がいらっしゃいました。その中には、入場証が間に合わず申し訳ありませんがロビーでお帰りいただいた方もいらっしゃいます。
 昨年12月13日に、日比谷公会堂、野外音楽堂での集会、銀座のパレードに、市民約5000人が集まりまして、児童虐待で昨年亡くなった子どもたちの命を悼む、それだけを目的に約5000人集まりました。その活動をビデオにしております。今回のこのシンポジウムも追加としてビデオになります。現在予約受付しております。制作費のほうがかなりかかりましたので、お値段は、一部5000円頂いております。ぜひ市民の方、インターネットを通じて、あるいはメール、電話で受け付けて発送しますのでよろしくお願いします。