虐待かなと思ったら… 189 虐待かなと思ったら… 189

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第三回シンポジウムの議事録

2002.03.09東京都お知らせ

鈴木恵子氏(足立区立東谷中保育園園長) 広岡智子氏(子どもの虐待防止センター理事) 桂浩子氏(元東大阪市中福祉事務所家庭児童相談室) 小松佳穂留氏(町田市健康福祉部児童福祉課)

緊急シンポジウム STOP!『児童虐待』 ~児童虐待防止法改正に向けて市民は訴えます~

法医学の見地から ~虐待被疑児童の鑑別診断における法的整備の重要性~
家族機能の再生・支援 ~長期・連続したかかわりの必要性~
専門委員会の報告
国と自治体の責務 ~第四条の拡大と強化~

日時 : 7月16日(水) 10時~12時 (開場9時半)

 会場 : 衆議院第二議員会館 第三会議室

(会議室が変更になりました)
丸の内線・千代田線国会議事堂前駅1番出口下車

レポーター
大阪府監察医  河野朗久氏
元児童福祉士  田中島晃子氏
二葉乳児院長  鈴木祐子氏
弁護士       平湯真人氏


大勢の方のご参加をお待ちしています

*チラシはこちら*
白黒(.doc) / カラー(PDF)


第3回シンポジウム議事録


日時:平成14年3月9日
於:明治学院大学
司会:才村 純氏(日本子ども家庭総合研究所)

○シンポジストによる発言と質疑
 1 足立区立東谷中保育園 園長 鈴木恵子氏
 2 子どもの虐待防止センター 理事 広岡智子氏
 3 元東大阪市中福祉事務所家庭児童相談室 桂浩子氏
 4 町田市健康福祉部児童福祉課 小松佳穂留氏
国会での動き




1 足立区立東谷中保育園 園長 鈴木恵子氏

保育園は、保育所保育指針に基づいて保育をしている。
 その内容は、総則にある家庭養育の補完、子どもの人権に配慮した保育方法、第12章「健康・安全に関する留意事項」では、「子どもの身体を観察するときに、不自然な傷、やけど、身体や下着の汚れ具合等を併せて観察し、身体的虐待や不適切な養育の発見に努める」「7 虐待などへの対応」と記されている。
 私と被虐待児の出会いは7年前になる。その児は、6ヶ月後に親子分離された。その時、父親は「連れていってもらって良かった、そうでなければオレが殺していたかもしれない」と語り、母親は「自分を責めなかったのは先生だけだった、他の人は目で責めていた」と語った。この両親は児相を強く拒否し、私を頼った。児相と相談しながら徐々に児相が前面に出ていき、私が引くようにしていった。この経験から、家庭支援の必要性と親を責めないことを学んだ。
 法制定後、全園児の生活状況と親子の係わりを見直した時、不適切な係わりを多く発見した。保育者達は親への対応を変化させ、親を責めない子育てを支援してきた。その結果、子育ての悩み相談がたいへん多くなった。
 被虐待児の入所に関しては、子どもの生活状況を24時間の中で考えた。被虐待児の発育状況や基本的な生活習慣の獲得状況、家族状況等を観察し、子どもへの支援方針を決めた。特に、子どもが示す「試しの行動」については危険な面を伴う場合があるので、園全体の共通認識で対応した。
 入所して間もないころ、子ども達は当該児の行動を警戒し近寄らなかったが、現在では何とか食事もとれるようになり、周りの子ども達と一緒に遊ぶようになってきた。しかし、園で獲得したものは安定せず、休みをはさむと、もとのもくあみになってしまうということの繰り返しであった。担任の無力感を取り除く担任支援が重要であった。
 親への支援も重要である。親への支援なくして子どもの援助は進まない。両親には子どもの良いところを誉め、何よりも毎日登園してもらうことが重要である。口うるさく言ったり指示を出さず、全面受け入れで信頼関係を確かなものにしていった。そのために親対応の窓口となる人を決め、園内で役割分担をしている。
 子どもと親を支援するため関係機関との連携をとった。日々の状態の変化を細かく児相へ情報提供することが必要である。児相の召集により関係機関が集まり、ネットワークが組まれている。
 様々な取り組みがされてきた中で、新たな課題が出てきた。一つは通告についてである。例えば、「今度虐待したら児相に通告するからね」と親に言う前に親との関係作りに力を入れることが必要だと思う。二つ目は、親に対して様々な援助が必要なのだが、「生活スキル」の学習が必要なときは、現在保育園で行っている保育参加等の機械では不十分である。体験学習ができるところがあると良いと思う。三つ目は、家族として一緒に行動することが難しくなった。「家族になる」ことを知って欲しいと思う。
 被虐待児だけでなく子育て全体の中から、私は現代ほど子どものことが後回しになった時代はないと思う。今保育園では「育てたつもり」や「育てたはず」という思いこみをなくし、子どもに「生きる力」を育んでいくための保育内容を見直している。親支援では「私を見て」という、親の気持ちを受け止め、その後に子どもの状況を理解してもらうという方法をとっている。中には子どもの心を受け止められない親もいる。園は見学者を受け入れたり、相談を受けたりして地域にある社会資源につなげている。
 法改正に望むこと
 虐待は子どもの重大な人権侵害であることの意味と、親子分離をする家庭だけでなく、在宅の家庭にも支援が必要であること。
 地域での家庭支援策も盛り込んで欲しいと思う。

(質疑)
相談員:「育てたつもり」の点をもう少し詳しく教えて欲しい。
鈴木:子どもの要求と一致しない親中心の子育ての意味である。
   子:「お母さん、コマ買って」。母「また今度ね」。
   子:「鉄棒やりたい」母:「それは保育園でやって」
   母が休みの朝に、子:「お母さんと一緒にいたい」母:「あんたはずるい。毎日保育園に行くのが仕事なのに」
   親と子の思いがずれている例をあげるといくつもある。このような親に対し保護者会等でカルタを作ったりして、子どもの思いを伝えている。
小学校養護教諭:発達支援に人を臨時雇用したというが、どのようにしたのか。
鈴木:区と交渉して特別に入れてもらった。心の発達支援児という位置付けで求めた。パート採用予算で対応してもらった。
小学校養護教諭:「試し行動」とは?
鈴木:他のクラスに行って、荷物を棚から全部降ろしたり、非常ベルを押したり。みんなでやるとき必ず、外れた行動をとったり、紙芝居するときに前を行き交ったり、突然後ろから押したり等し、自分が叱られる度合いを試している行動である。
才村:興味深かったのは担任支援。園ぐるみで役割分担を決め、担任支援の態勢が整っている。むしろ他の園で上司の理解が得られなくて苦労したケースはないか(会場からは声がない)。


2 子どもの虐待防止センター 理事 広岡智子氏

センターの役割は、電話相談、他機関と連携した危機介入、MCG(「マザー&チャイルド・グループ」虐待問題を抱えた母親のための治療グループのこと)、広報啓発活動。
 私自身は最近、電話相談はなかなかできていないが、これは重要な事業。最近の傾向として、一般市民からの通報はそれほど増えていない。児相では非常に通報が増えているようだ(騒音防止策で児相が使われているように思われる。むしろ近隣との問題を解決できない人が通報してくる)。教員からの通報の増加も緩やかだが、方向としてはいい方向だ。はっきりと所属を告げた上で電話をしてくる例が出てきた。電話相談のなかで幼い場合は保健所を紹介したり、漠然とした電話だとさらに情報を確認したり、一定の程度スクリーニングをしている。「町で子どもを叱り飛ばしている母親がいる。通報したほうがよいか」という質問があるが、むしろ母親に「大変だね」と声をかけるほうが重要ではないか。一般市民に対し、何でもかんでも通報ではなくて、市民としてやれることがあるのではないか。こういったことを通報者と話し合ってみることもやっている。
 通報を恐れて、子どもを泣かさないようにしている母親が見られるようになった。泣き声が過剰なストレスになっており、通報制度の功罪と感じる。一方、重大な虐待を自ら電話で話してくる母親も出てきた。私たちは「電話相談をしてくる親は、まあ大丈夫だ」と認識していたが、実はそうではなかったのではないか。かなり危険な親もかけてくるようになった。
 電話相談をすると児相に通告されるのではないかと恐れている親が出てきた。これも通告の功罪だろう。
 センターで防止法施行後変わったのは協定書の締結。CC(ケースカンファレンス)にも虐待対策課職員が参加するので、連携が深まった。しかしながら、電話相談事例で児相と連携したところ、児相が親を訪問してしまい、結果的にセンターの信頼を失ったこともあった。連携の未熟さの現れだろう。センターも加わってネットワークを組んだところ、「包囲網」はできたが、母親が警戒してセンターにも接触してこなくなった事例もある。ケアネットワークは、危機介入のネットワークと異なり、徹底的に親の立場に立つ人が必要。マネジメントを行う児相が理解しくれればと思う。区市町村が虐待対応をするようになったが、知識、経験も少なく、お互いに相手が動くだろうと思っているうちに子どもが落ちてしまう事例もあった。児童福祉司にあまりに多くの課題が山積みされている。
 虐待親への対応について。電話相談は匿名性から有効な親ケアの手法。親は本音を言える。問題のある事例では特定の相談員を決めて1対1の援助をすることができる(これは民間の強みではないか)。ある事例では1か月も電話を続けて、「愛している人も虐待する」と言って、信頼関係をつくっていく。最終的に母親は名前を名乗り、その了解を得て児相に通報。直ちに一時保護。親は抵抗しなかった。
 MCG。97年からやっている。3分の1は1、2回で来なくなる。3分の1は児相が介入して子どもは施設措置。皆虐待を認知し、治療動機を持っている。28条ケースでつながっている事例は今はない。
(質疑)
弁護士:MCGの将来像について。
広岡:虐待している親の心のケアをするのがMCG。しかし、心のケアをするのはMCGだけではない。病院も臨床心理士もある。そういったなかのひとつがMCGということになる。同時に他の機関との連携を取らないとうまくいかない。ひとつの経験でしかなく、さまざまな種類のMCGが必要なのだと思う。
センターのMCGは、虐待を自覚し子どもを保護されている母親の受け皿として、生き延びるだろう。この点は児相と連携できるだろう。しかし、虐待を自覚できない母親は難しい。MCGはまだ試行錯誤。ただ参考にはなるのだろう。親は自分の苦しみ、子どもとのことなどを語れる場がなかった。それがMCGだろう。虐待の重症化を防ぐ役割は果たせていると思う。
参議院議員秘書:児相のワーカーの中で、スーパーバイザー的なことを行う人と実際に現場に出る人を分けたほうがいいのか。それとも児相職員はコーディネーターの役割に徹して保健所などの別機関を使ったほうがいいのか。
広岡:矛盾する話ではないように思う。できるところからやるべきで、増員をして分担するのが現実的か(保健所は別の役割だと思う)。
児相心理判定員:全国の児相には700名の心理職がいる。心理職と児童福祉司が一緒に動いていることは知ってほしい。対立することが、むしろよりよい対応を生み出す。虐待親の心の闇を考えると、心理職が参加してケース理解をすることが重要。カウンセリングは児童福祉司の役割とされているが、実際には心理カウンセリングは心理職が行っている。
才村:全判協が最近、児童相談所の心理判定員の活躍等について調査をした。関心がある方は読まれるとよい。
***:MCGについて、1、2回で辞めてしまう人が3分の1ということだが、どういう理由か。
広岡:いろいろな理由がある。参加するときのグループの雰囲気の問題もある。最も軽い人と最も重い人がつながらないようだ。一方、つながる人は夫との関係がよい。夫が「グループに行きなさい」といって支えるとつながる。つながらない理由としては、もちろんこちらのケアが十分でないこともある。つながらなかった人を追うことはしない。


3 元東大阪市中福祉事務所家庭児童相談室 桂浩子氏(平成13年9月末退職)

(レジュメから)
 家庭児童相談室は昭和39年、厚生省(当時)の通達により福祉事務所に設置された相談機関で、福祉事務所で扱う児童福祉の中で、専門的な技術を必要とする業務を行うこととされている(厚生省事務次官通知「家庭児童相談室の設置運営について」)。
 しかし、設置後30数年になるにもかかわらず法的整備がなされず、家庭児童相談室の運営は全国的に地方自治体に委ねられているため、業務内容、相談員の身分、勤務条件もさまざまである。設置運営要綱においては、相談員の身分を「非常勤職」とし、社会福祉主事も他業務との兼任でも可となっているため、緊急時の対応が難しく責任の所在も明確でない等の制度上の大きな問題点を残している。
 このように家庭児童相談室の置かれている状況は非常に不安定なものであるが、全国の家庭児童相談室は、法的な位置付けもないなかで地域に密着した相談機関として多くの成果をあげている。平成12年においては1230か所の福祉事務所の内955か所に家庭児童相談室が設置されていて年間約65万件(延べ件数)の相談を受けていることからみても、家庭児童相談室が児童相談所と並んで重要な役割を担っていることが分かる。
(報告)
 30数年間、ずっと家庭児童相談室の相談員をしてきたが、法的、制度的には全く進展がなかった。問題は相談員を非常勤でも可としているところ。東京都は家庭児童相談室を設置していない。他方、大阪府下の区市町村では多くは常勤の相談員を置いている(設置率は81%。うち85%が常勤職員を置いている)。
児相が総合病院だとすると、家庭児童相談室は町医者という位置づけ。18歳未満の子どもに関する相談は何でも受ける。臨床心理士が主となっているところもあれば、ケースワーカーがやっているところもある。摂津市は臨床心理士が多く充実しているが、1、2人でやっているところも多い。
 家庭児童相談室の特徴としては、人事異動が少ないため、長期間にわたって関わることができる。私も「おばあちゃん」的な役割を果たすようになった。ある親たちにとっては精神的な実家。児相は法的権限を持って介入的だが、家庭児童相談室は権限がなく、かえって親の味方になり易い。また、関係機関との関係もできやすい。
 最近は、しつけや発達相談という主訴で来室しても、その背景には育児不安や母親自身の心理的問題があるケースが増えている。多問題ケースや、他の機関にはつながらない「谷間のケース」がくる。
 区市町村単位の小さなネットワークについて、事務局的に関わることも増えてきている(児相単位だと児相がやってくれるが)。地域との結びつきが濃いため、在宅で援助していくケースや、いったん保護した後、地域に戻ってくるケースなどで、主導的な役割を果たしている。
 役割としては、やはり(権限もないため)予防的な役割が重要。家庭児童相談室ではグレーゾーン(放置しておけば、将来、虐待に移行すると予測されるケース)に注目している。現在、連絡協議会でグレーゾーンスケールをつくろうとしている。
 MCGをモデルとして、マザーサポートグループを立ち上げる家庭児童相談室が増えてきている。東大阪市では軽度を対象にしてつくってみたが、実際にはどうしても中等度以上の母親が来ている。一方、子どものグループも重視している。赤ちゃんなのに泣かないとか、逆にずっと泣き続けるとか乳児の時から母親の影響がはっきり出ている。10回を1クールとしているが、2期目くらいから母親の心理的な問題がはっきりでてくることがある。子どもは早くに関われば、2期目くらいになると収まってくる。早期に関わることが重要。
先にも述べたが、家庭児童相談室が地域ネットワークの要としての役割を果たしている。児相(子ども家庭センター)と両輪として、例えば児相が子どもをみる代わり、家庭児童相談室が親の味方になるということもある。
 家庭児童相談室はグレーゾーンに関わることが多いため、発見機関としての役割もある。今後もこの発見機能を高めていきたいと考えている。グレーゾーンは家庭児童相談室に、というように考えている。
(補足)
白山:摂津市家庭児童相談室。グレーゾーンスケールについて。グレーゾーンについては、どう扱っていいのか分からず、いつも議論となっていた。そこで、まずグレーゾーンの定義からはっきりすることになり、グレーゾーンスケールをつくることになった。項目ごとにカウントして、84点で分けるようにした。何もスケールをつくること自体が目的ではなく、1人職場でも虐待かグレーゾーンか判断できるようにしたい。今後はグレーゾーンといってもいろいろなタイプがあるので、それごとに必要な援助を考えていくような検討もしている。

弁護士:子育て支援のなかみは広いと思われるが、「保育園に行ったらどう?」というアドバイスだけでは不足しているのであって、実際に家に行って子どもを保育園に送り迎えするとか、出張して行っての支援も必要なのではないか。家庭児童相談室では臨場しての支援活動はあるのか。
桂:そこまでできているところはほとんどないのではないか。働けない母親が、毎日同じ時間に起きて子どもを保育園に連れていくというのは、実はなかなか大変。経済的にも苦しいが、保育園から費用を請求されると、それだけで行きたくなくなる。子どもが保育園で楽しそうだと、自分が否定された気分になることも。したがって、実際に送り迎えをすることだけでもだめで、母親の心理面にも配慮しなければならない。家庭児童相談室ではファミリーサポートなど工夫している。ただ、今の家庭児童相談室では親の心理的サポートを重視している。


4 町田市健康福祉部児童福祉課 小松佳穂留氏

昨年5月末、保育園に通園中の4歳児が母の交際中の男性からの暴行により死亡したという事件があった。町田市に対しても、市民から多数の抗議が寄せられた。マスコミからも取材が殺到したし、議員からも質問攻めあった。市長から、町田市だけの問題に限定せず、より大きな視点から検討してほしいと指示された。虐待防止センターを含め様々な機関を頼って、解決方法を検討した。それが「町田市と児童相談所等との連携のあり方検討会」。
 本件は、もともと保育園から連絡があり、当日、八王子児相の出張相談中の児童福祉司に連絡。翌日、町田市A地区担当の児童福祉司に連絡。児童相談所からいくつかのアドバイスを受け、対応しようとしていたところ、事件が発生した。
 検討会では、なぜ速やかに安全確認をしなかったのかという点が問題になった。また、町田市と八王子児相は担当者個人間の連携はあったが、機関どうしの連携は不十分であった。市としても、周辺情報の収集を積極的に行わなかったし、電話だけのやりとりで危機感の共有が不十分であった。法律上、市の権限が不明確で、発見者と児相との間に立って、何ができるかよく分からない。
 今後は、児相との日常的な連携を緊密にすること、虐待に関する知識を積み上げることなどが課題だが、そのためにも「八王子児童相談所町田出張所」をつくってほしいと提案している。
 法改正の点からすると、児童福祉司の配置基準の見直し、児相の役割や権限の整理、市町村の役割の不明確さなどが課題か。
(補足)
田中:平成12年度、児童係から子育て相談係となり、相談業務の充実が図られた。これまでは児相に取り次ぐだけだったが、地区担当制を設けて、それぞれの地区担当の児童福祉司と対応させるようになった。通告があった場合、市はできることはやろうということになった。例えば、現在は通告があると、直ちに世帯状況の把握をすることにした。児相に連絡した上で、学校や保育所等にも確認して情報を収集し、児相に報告する。通告書の書式を整え、そのなかで「通告の意図」欄を設けて、何をしてほしいのかを尋ねるようにした。匿名通告については、後に確認することができないので、かなり細かい状況まで聞く。通告者が了解すれば、市が訪問することもある。現場を確認したら、必ず児相に報告する。不安なときは児童福祉司に付添ってほしいと頼むが、児童福祉司が遠すぎて、一緒に行くことが難しい。また現場を確認した際、保護する必要があるのかどうかも判断できない。町田市では地域子育て支援ネットワーク連絡会を設けているが、その中に実務者会議を設け、下部組織として9地域のネットを設けている。現場で感じるのは、通報があって動いたが、なかなか虐待かどうか判断できない場合、児相は「市が虐待と判断して子どもを連れてくれば、児相も保護する」と言われてしまう。

才村:オーストラリアから帰国したばかりだが、オーストラリアでも死亡事例が発生すると徹底的な調査をするようだ。
虐待当事者の会:虐待親のケアをしている。町田ケースで、親についての対応についての検討はどうなっているのか。
田中:保護者にはケアはしていない。
小松:その点の検討は十分にできていない。
広岡:本当は親の処遇方針をたてるべきだが、児相にはあまりその意識がない。私が思うのは、心理職の影が薄い。もっと心理職が声をあげてもいいんじゃないかと。そうしないとケアが必要だという声が届かない。死亡事故があった保育園の親の会から講演を頼まれた。しかし、保母らはほとんど参加せず、参加した保母は罪悪感にさいなまれている。親たちも傷を負っている。自分たちにもやれたことがあったのではないかと感じてしまう。デス・カンファレンスをしてワーカーをケアすることが必要だ。池田小学校の事件のときにカウンセラーが派遣されるように、死亡事例があったときは児相のカウンセラーが派遣されるというシステムができるといい。
白山:町田市のシステムを聞いていると、まさに大阪の家庭児童相談室と同じ。町田市のやり方では経験が蓄積できないとのことだが、家庭児童相談室なら蓄積が可能。親のケアができていないのも東京にこの家庭児童相談室というシステムだからではないか。大阪では、むしろ子ども家庭センターが悪役を引き受け、家庭児童相談室が親に寄り添う。やはり家庭児童相談室の役割は全国的にも重要になっていると思う。法的な位置付けと、予算が重要だろう。

5 国会での動き

段本参議委員議員
 共生社会に関する調査会で、1年半かけて必要な改正点を検討している。関係各省から話を聞いたり、現場の声を聞いたり、あるいは現場に出ていって聞かせてもらったりしているが、実際には虐待ケースは千差万別。中には法律であまりしばらないほうがよさそうなケースもあるし、しっかりしばったほうがいいケースもある。大変勉強になった。

田嶋参議院議員~池田秘書
 出て行く出張サービス(アウトリーチ)を法律に書く必要があるのではないかと感じた。もう一点は、低所得者への支援。児童扶養手当の削減もあるが、何とかしなくてはならないのではないかと感じた。

植田参議院議員~時田秘書
 社民党としては機関決定していないが、できれば改正案を出したいと思う。6月解散説も流れているが、しっかりと議員をつかまえてほしい。地元に帰ったときに議員をつかまえて、しっかり言う(地元の声は議員にとって怖いもの)。議員会館で院内集会を開いてもらえるといいかと思う。

原衆議委員議員~メッセージ
 青少年特別委員会が設置され、薬物関連の審議が行われるが、虐待防止法の見直しの必要性も認識している。今後の指導を仰ぎたい。

主  催 児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワーク
共催・協賛 日本子どもの虐待防止研究会
児童虐待防止法の改正を準備する会
アン基金プロジェクト
東京都養育家庭連絡会
子どもの虐待防止センター
子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク
CAP市民ネットたま
全国乳児福祉協議会
全国児童養護施設協議会
全国自立援助ホーム連絡協議会